断熱性に優れた瓦屋根で、日本の冬を快適に!~世界中で認められている瓦の断熱性能~

瓦屋根の断熱性能

 

2018年も残りわずかとなり、日に日に寒さも厳しく感じられるようになってきました。

暖房が欠かせない季節になりましたが、部屋を暖房で暖めても、暖気は常に上に昇る性質があるので、屋根から屋外に抜け出てしまっていたら、もったいないですよね。

 

実は家の断熱性能は、瓦や金属屋根、化粧スレートなど、屋根材の種類や施工方法によって大きく変わってきます。

そこでこの記事では、冬を快適に過ごせるよう、瓦屋根をはじめ様々な屋根材の断熱性能についてご紹介したいと思います。

 

 

夏は涼しく、冬は暖かく、外気を遮断し快適に! 瓦の断熱性能瓦屋根は冬は暖かく、外気を遮断し快適

 

夏にご紹介した「瓦、金属、カラーベスト……3つの屋根材の断熱性を徹底比較!」という記事で、3種類の屋根材の断熱性を比較検証した結果、「熱の侵入が一番少ないのは瓦屋根」であることをお伝えしました。瓦屋根は断熱性や通気性が優れているため、夏は屋外の熱気が家の中に伝わることを防ぎ、夏の室内を涼しく保つことができるのです。

そして、実は冬でも、この瓦屋根の断熱性によって家を快適で過ごしやすくすることができるのです。

 

熱は必ず高いところから低いところに移動するという性質があります。夏は屋外の熱を遮断してくれた瓦屋根ですが、冬になると、暖房で暖められた暖気が屋外に逃げるのを防ぐ役割を果たしてくれます。

昔から使われてきた屋根瓦は、真夏の熱気から真冬の寒気まで、1年を通し気候変化の大きい日本の風土に合わせてその家に住まう人々の住環境を守ってくれる、優秀な屋根材なのです。

 

 

■熱伝導率をチェック!屋根材の冬の断熱性比較

そもそも、屋根材の違いで断熱性に差は生まれるのでしょうか? 断熱性を測る目安となる「熱伝導率」と「空気層」に着目して、化粧スレート・ガルバリウム鋼板・瓦の3種類を比較してみましょう。

 

屋根素材別の熱伝導率
出典:一般社団法人全日本瓦工事業連盟|http://www.yane.or.jp/

 

これを見ると一見、化粧スレートが一番断熱性能が高いように見えますが、実際の断熱性能を比較するためには屋根材の厚みの要素を入れる必要があり、その要素を加味した熱抵抗値は次の計算式で表すことになります。

 

[熱抵抗値] = [厚さ] ÷ [熱伝導率]

 

一般的な粘土瓦の厚みは18㎜、化粧スレートは5㎜、ガルバリウム鋼板は0.4㎜ですから、それぞれの熱抵抗値は次のとおりになります。

 

粘土瓦の熱抵抗値: 20

化粧スレートの熱抵抗値: 10

ガルバリウム鋼板の熱抵抗値: 0.009

 

以上の通り、素材だけを見ても粘土瓦の断熱性能は他の屋根材に比較して圧倒的に勝っているということになります。

 

・化粧スレート

化粧スレートは、軽量性やコストの低さから、日本の住宅において多く普及しています。

単純に屋根素材として比較した熱伝導率テストでは、化粧スレートは粘土瓦と同様に、熱伝導率1以下と低い数値ですが、厚みが5㎜と比較的薄いため、熱抵抗値は粘土瓦の約半分となってしまいます。また化粧スレートは屋根の下地に密接して葺いていく工法なので、空気層がほとんどありません。

熱抵抗値が低い上に空気層がほとんどないということは、室内の熱気が屋根材に伝わり、外に逃げやすいことを示しています。

 

・ガルバリウム鋼板(金属屋根)

デザイン性が高いことから建築家に好まれ、最近人気のガルバリウム鋼板ですが、熱抵抗値は他のどの種類の根材と比較しても極めて低いと言わざるを得ません。またガルバリウム鋼板は化粧スレート同様に、屋根の下地に密接して葺いていく工法なので、空気層がほとんどありません。

同様に他の金属屋根であるトタンやステンレス屋根なども、一般的に厚さ0.35㎜~0.5㎜と、薄い上に熱抵抗値は低い屋根材です。そのため、このような金属屋根を採用する場合には、他の断熱材と併せて使う必要があります。

 

素材別の屋根の構造

 

・瓦屋根

熱抵抗値が高く、素材自体の断熱性能の高い粘土瓦ですが、瓦屋根には熱を逃がさないポイントが「瓦を葺く工法」にあります。

厚みのある瓦同士が重なることによって野地板(屋根の土台)との間に自然と大きな隙間ができ、そこが断熱性能に大きく寄与する空気層になります。瓦が下地と密着していないことで、冬は室内の暖房で暖められた熱気が外へ逃げにくくなります。

 

このように、素材の熱抵抗値や屋根材自体の厚み、また葺き方による空気層の違いから、屋根材によって断熱性能が大きく変わってくるのです。

 

 

冬の寒さにも耐える!海外の極寒地でも評価される瓦の耐寒性

瓦の耐寒性

 

東北から沖縄まで、日本の中でも地方によって気候の特徴は大きく異なります。古くから日本家屋で使用されてきた瓦は、もともとはそれぞれの土地で採れる粘土を使い、その土地に伝わる製法で生産され、その土地に建つ家の屋根に使われてきました。

そのため、瓦は製造された地域によって、吸水率や耐寒性が異なります。全ての瓦が寒さに強いわけではないので、その地域の気候に合わない瓦を使うと凍って割れてしまうこともあります。その地域に合った瓦を選ぶことで、瓦の特性を活かすことができるのです。

 

例えば石川県の「能登瓦」は、裏面にも釉薬をかける「ドブづけ」という手法で焼かれ、北陸ならではの風と雪に対応されています。福井県の「越前瓦」は紅柄(べんがら)を主成分とした生釉のドブづけと特殊な焼成方法でつくられ、雪下ろしの際に屋根にのっても滑りにくい瓦になっています。豪雪地帯である新潟県の「安田瓦」も雪下ろしに対応して瓦の肌がザラザラして滑りにくくなっていますが、こちらは「還元焼成法」で粘土中の鉄分や石などを表面に噴出させる製法です。

 

このような寒冷地で作られた瓦はいずれも耐寒性があり、凍結融解(凍って溶けてを繰り返すこと)による凍害で割れてしまうことが無いように工夫がされています。

最近ではこのような瓦の耐寒性能が高く評価され、ロシアや中国東北部の寒冷地でも、一部の日本の瓦が使用されるようになってきました。極寒の環境でも割れない瓦の品質やデザインの良さが、海外でも注目されているのです。

 

屋根材の凍結と溶解
出典:一般社団法人全日本瓦工事業連盟|http://www.yane.or.jp/

 

 

冬をさらに快適に!断熱性をアップする瓦の施工方法

熱抵抗値の高い素材、屋根材と屋根の間にできる空気層、地域特性に合わせた製造方法など、瓦は冬も快適に過ごせる素晴らしい性能を持った屋根材です。施工の方法によっては、さらに冬の断熱効果を高めることができます。

 

従来の工法では、釘やビスを使って瓦を屋根に固定していました。しかし、瓦専用のポリウレタン接着剤であるポリフォームは、瓦と屋根の間で泡が3倍に膨らみ、段差や小さな隙間にも入り込んで固定していきます。硬化したポリフォームは-30℃~70℃まで膨張収縮がほとんどないので、寒冷地でも安心して使えます。

 

ポリフォームの瓦施工事例

 

このポリフォームの泡は優秀な断熱材の性能を持っており、本来の瓦の断熱効果を一層高めることができるので、部屋の暖気を外に逃がさずキープできるようになるのです。

 

最も断熱性能の高い屋根材である粘土瓦。みなさんも、この伝統的な瓦屋根にその断熱性能を一層高めることができるポリフォーム工法を組み合わせて、暖かく快適な冬を過ごしてみませんか?

 

 

【ポリフォーム日本代理店会】
http://www.polyfoam.jp/

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