屋根を葺き替えるタイミングは?

ポリフォーム工法による屋根の葺き替え工事

 

屋根材は雨風や紫外線に日々さらされ、少しずつ劣化していきます。屋根材によって耐用年数は異なりますが、特に薄型の化粧スレートやアスファルトシングルなどは他の屋根材と比べて早めに寿命を迎えるケースが多くみられます。

 

寿命を少しでも延ばすためには、定期的な点検や塗り替えなどのメンテナンスが欠かせません。しかし、メンテナンスを繰り返しながら大切に使っていても、「もの(物)」である以上、屋根材がその本来の役割を果たせなくなる時は必ず訪れてしまいます。

 

そこで今回は、屋根材の寿命と葺き替えの方法についてご紹介します。

 

■「葺き替え」と「重ね葺き」の違い

 

屋根材の劣化が進んできたら、「葺き替え」や「重ね葺き(カバー工法)」といった工事で屋根の役割を取り戻すことができます。これにより、劣化した屋根が新しくなるだけでなく、最新の工法や屋根材にすることで従来よりもメンテナンスが楽になったり、災害に強い屋根にしたりすることもできます。
そこでまずは、この「葺き替え」と「重ね葺き(カバー工法)」の違いを見てみましょう。(画像引用:ケイミュー株式会社HPより)

 

・葺き替え
葺き替えとは、下地から屋根材まで全てを剥がし、新しい屋根に葺き替えることです。

葺き替え工事とは

 

・重ね葺き(カバー工法)
屋根の痛みが激しくなる前であれば、現在の屋根材を残し、上に新しい屋根材で覆う「重ね葺き」で対応することも可能です。葺き替えに比べて短期間の工事で終わり、コストも抑えられます。(薄型化粧スレートやアスファルトシングルにカバー工法はよく採用されていますが、瓦屋根にはカバー工法は現実的ではありません)

重ね葺き(カバー工法)とは

 

しかし、すでに雨漏りが発生していたり野地板に腐食や反りが激しかったり、あるいは防水シートや野地板といった下地が劣化していたりする場合は、重ね葺きでは対処できないため、葺き替えが必要になります。

 

■薄型化粧スレートの葺き替えのタイミング

 

では、劣化による屋根材の葺き替えのタイミングは、どのように判断したらよいのでしょうか。

 

建築コストが安くすむなどの理由から、薄型の化粧スレートが現在新築住宅で最も多く使われています。まずはこの薄型化粧スレートの場合をご説明します。

 

薄型化粧スレートは、基材の上に化粧層、採石、塗膜層などが重なってできています。劣化によって、この層が剥離していく「層間剥離」が生じることがあります。

 

薄型化粧スレートの劣化による「層間剥離」

 

紫外線や雨水の影響で塗料が色褪せるチョーキングや、塗料が剥がれる塗膜剥離が起きていないか、定期的に点検をしましょう。塗膜剥離を放置すると、基材にまで水分が染み込み、屋根材がいちじるしく反ったり強度不足の状態になったりしてしまいます。

 

こうした状態になると、屋根材が雨水などの水分を吸ってしまい、屋根本来の目的である防水の役目を果たせなくなっています。そうするとメンテナンスでは対応できないため、葺き替えが必要になってきます。

 

・2000年前後に製造された「ノンアスベスト」の化粧スレートに注意
以前の化粧スレートにはアスベストが含まれていましたが、健康被害などが指摘され、2004年にアスベストの規制が始まりました。現在の化粧スレートは、ノンアスベストになっており、安心です。

 

アスベスト禁止

 

しかし実は、「アスベストが含まれていることで耐久性が高まっていた」という利点もあったのです。ノンアスベストの化粧スレートは健康被害については安心である一方で、従来よりも耐久性が劣ってしまうというデメリットも生じています。

 

特にアスベスト規制前後に製造された化粧スレートは、10年程度で傷み始めてしまうものもあります。2018年の台風で被害のあった化粧スレート屋根の多くがこの時期に製造されていたとの指摘も出ています。耐用年数内であっても定期点検を行い、被害が出る前に早めの葺き替えを検討しましょう。

 

■瓦屋根の葺き替えのタイミング

 

では瓦屋根ではどうでしょうか。たとえば粘土瓦の耐用年数は屋根材の中でも1番長く、50〜100年以上もつと言われています。実際に、奈良県の元興寺では、1400年前の飛鳥時代の粘土瓦が今でも使われているほどです。

 

このように寿命の長い瓦屋根は、どのようなタイミングで葺き替えが必要になってくるのでしょうか?

 

・瓦屋根は30年を目安に点検を!
粘土瓦は耐久性が高く割れた部分だけを交換できるなど、基本的に葺き替えをせずに長く使うことができます。

 

瓦屋根は30年を目安に点検を

 

しかし粘土瓦の耐用年数が非常に長いだけに、それ以外の漆喰や雨じまい板金、防水シート、野地板といった部分の劣化はつい見逃しがちです。できれば30年おきを目安に点検しておきたいところです。

 

また棟瓦のゆがみや瓦の割れ、漆喰の崩れなどが雨漏りに繋がります。下地などに影響が出る前にチェックして、早めにメンテナンスをしておくと安心です。

 

・強風による瓦のズレに注意!
粘土瓦は頑丈な屋根材ですが、劣化よりも台風や強風によって瓦がずれたり、飛散したりする心配があります。

 

瓦は、重なって表に見えない部分にビスを打って屋根に留めています。つまり、軒先側はビス等で固定されていません。そこで、強風によって上下に振動する「フラッタリング現象」が起こると、ビス留めされていない軒側が浮き上がってしまいます。これを繰り返すことでビスが起こされてさらに浮きやすくなり、瓦のずれが起こったり、飛散したりすることがあるのです。

 

強風によるフラッタリング現象

 

実際、2019年9月9日に関東地方を上陸した台風15号では、屋根材が吹き飛ばされる被害が数多く発生しました。このときの最大瞬間風速は、千葉県千葉市中央区で57.5m、館山市でも52mを記録していたことがわかっています。今回被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げますと同時に、一刻も早い生活再建を願うばかりです。

 

風圧実験による屋根瓦の耐性1
(ビス2本打ちのガイドライン工法でも、風速50mになると瓦が暴れ出しました|風圧実験より)

 

■瓦の弱点を克服!施工方法で瓦屋根の寿命を延ばす

 

実はポリフォーム工法で瓦留めをすることで、野地と瓦を一体化できます。瓦の裏側を軒先側まで面で固定できるので、強風で飛散することもなくなり、フラッタリング現象が起きることもありません。

ポリフォーム工法はフラッター現象が起きません

ハリケーン被害の多い米国フロリダ州では、すでにポリフォーム工法が義務化されています。屋根の修理や葺き替えの際にポリフォーム施工を導入すると、瓦屋根の弱点であった瓦のずれや飛散の心配がなくなります。この工法は粘土瓦に限らず、薄型化粧スレートや金属屋根、アスファルトシングルなど、屋根材を問わず効果を発揮します。

 

風圧実験による屋根瓦の耐性2
(ポリフォーム工法では、風速70mを超えても微動すらしません)

 

 

災害にも強い屋根にすることで、屋根の寿命をさらに延ばすことができます。メンテナンスの際は、ポリフォーム工法をご検討されることをおすすめします。

【ポリフォーム日本代理店会】
http://www.polyfoam.jp/

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