実は、メリットがいっぱいある「瓦」

日本で古くから使われてきた屋根材といえば、「瓦」。
今回は、この瓦について取り上げてみましょう。

 

■粘土瓦の種類と産地

 

瓦にもいくつか種類がありますが、この記事で取り上げるのは「粘土瓦」です。
文字通り、粘土を使って1,000℃~1,300℃もの高温で焼き固めたものです。

 

粘土瓦は製法によって大きく3つに分けることができます。
陶器のように釉薬を塗って焼いたものは「釉薬瓦」。何も塗らずに焼いたものを「素焼き」。素焼き後にいぶして表面に銀色の炭素被膜をつけたものを「いぶし」といいます。

 

さらに粘土瓦は、その土地の土や釉薬によって性能が異なります。現在、国内で主流となっている瓦は大きく3つ挙げられます。総合的にバランスの取れた、愛知県の「三州瓦」。きめ細かい質感と滑らかな色に定評のある、兵庫県の「淡路瓦」。凍害や塩害に強く耐久力にも優れた、島根県の「石州瓦」です。

 

三州瓦の街並み

三州瓦が作られる愛知県は、日本最大規模の瓦の産地。普及率もNo.1です。

淡路瓦

淡路島特有の粒子が細かい「なめ土」により、美しい仕上がりが人気の淡路瓦。

石州瓦の街並み

伝統的な石州瓦は、赤色が特徴。風雪の厳しい日本海沿岸で多く見られます。

 

■粘土瓦のメリット

 

産地それぞれに魅力がある粘土瓦ですが、他の屋根材と比較しても長い歴史を持っているのも特徴です。日本へ瓦の製造技術が伝わったのは、仏教の伝来と同時で西暦588年、古墳時代の末期といわれています。淡路島では、その10年後には稼働していたと思われる瓦窯跡が発見されているほどです。

 

このように、粘土瓦が現在まで使われ続けているにはワケがあります。それは、現代の日本家屋においても、多くのメリットがあるからです。そのいくつかを紐解いてみましょう。

 

 

・20年間で110万円の節約に!
陶器瓦は、釉薬によってガラスコーティングされた「陶器瓦」、表面が炭素被膜で覆われる「いぶし瓦」、ともに耐久性に優れた屋根材です。他の屋根材のように、塗膜の劣化・コケなどの付着>基材へのダメージ>雨水の浸入…といったトラブルのプロセスが無いため、メンテナンス費用が少なくて済みます。

 

粘土瓦普及委員会によれば、仮に屋根面積が100㎡の場合、化粧スレートと比べると、建設時の費用も含めて20年間でおよそ110万円の節約になるとのことです。

 

もちろん、割れてしまったら効果が発揮できなくなりますが、瓦屋根の良いところは、割れた瓦を交換すれば済むところ。大規模な葺き替えなどは不要で、万が一の出費も抑えることができます。

節約


・飛び火を防ぎ、凍害にも耐える!
瓦1枚には、約3kgもの粘土が使用されています。そこには燃える材料は一切含まれず、建築基準法でも「不燃材料」とされています。火事の飛び火から住まいを守ることができ、熱による膨張もありません。

 

また寒さに対しても強く、凍結と融解を300回繰り返す実験では、質量の変化は0.4%程度。ひび割れや剥離も見られず、環境の影響をほとんど受けないことが分かりました。

 

 

・夏場の暑さを7℃~8℃下げられる!
快適性も粘土瓦の特長です。夏場、直射日光にさらされる屋根は、表面温度が70℃にもなります。断熱が不十分だとその熱は屋根裏に伝わり、直下の部屋はエアコンが効かないほど暑くなります。

 

粘土瓦は土という素材自体、そして瓦と野地板(屋根の下地材)の間に通気層を作る工法自体にも断熱・遮熱性能があるのが強みです。これは化粧スレートや金属屋根と比べた場合、平均して7℃~8℃の温度低下になります。

 

瓦の断熱性 スレートの断熱性

 

 

・防音効果で雨音が聞こえません
土を厚さ2cmに焼き固めた瓦は、防音効果もあります。まず、雨音が聞こえません。
台風や暴風雨のときには、絶え間なく断続的に屋根を激しく叩く雨音に、怖さを感じる方もいらっしゃるかと思いますが、粘土瓦なら、そんな音もシャットアウト。
人間の耳に届きやすい1600Hzの音域で、瓦は他の屋根材を遙かにしのぐ高い吸音率を示し、優れた遮音効果が実験により確認されています。

 

・倒壊の原因は瓦ではなく構造の弱さ
震災で注目を集めてしまう瓦の重さ。確かに、屋根の重さで家の耐震性は変わります。しかし、軽い金属屋根でも倒壊している住まいはあります。

 

つまり、問題の本質は、「構造」にあります。
1981年(昭和56年)6月に改正された建築基準法では、屋根の重さを考慮した構造計算が義務づけられています。改正後の建物であれば、屋根重量に応じた壁量、柱・梁の太さ、強固な基礎などが用意されているはず。決して、瓦屋根の家が耐震性で劣っている、ということはないのです。

 

阪神淡路大震災でも無事だった瓦屋根

地震によるショッキングな映像の影響もあり、現在はあまり良い印象を受けない瓦ですが、実は、メリットがいっぱいある優れた屋根材です。日本の伝統ともいえる瓦を、ここでひとつ、見直してみませんか。

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